レンゲの花を
踏みにじり、
猫も犬も
村人も追い散らし。

瑠璃の鏡を
振りかざした、
異形の怪物、
いねいねびーが現れた。


耳まで裂けた
その口開くと、
とどろき渡る
雷鳴の声。

よいか、
ほんとうは私は、
いないのだ。
さあ、解け。解け。

いねいねびー。
一年の、一日の、一秒の
秋の祭りの朝に、
消えてなくなる。


いねいねびー。
千年の、万年の、億年の
春の祭りの夜に、
現れる。




はいっ
愛ちゃんは、
おっきくなったら
なんになりたい？

えっと、
いつも楽しい
花屋さん。


はいっ
誠くんは、
おっきくなったら
なんになりたい？

うーん
新幹線の
運転手。

アーティスト？
漫画家？
お金持ち？
医師？
世界には
たくさんな夢と、
たくさんな絶望で
いっぱいです。

けど、
愛でも誠でもないなら
ただ何ものでもない
その私です。





これからは
絶対に答えがない
質問をしなくてはなりません。
ヒマラヤ山麓の
降り積もる雪の洞窟の
女賢者が厳かに告げました。

じゃ、いますぐ始めるっ、と金色の
目から殺人光線を放射しながら、
ビッビは大きく足を踏ん張りました。

んとね、生きるって？

のーほほほ。そうきたか。
ビッビには
種を蒔く真っ黒い右手と、
収穫する真っ白い左手があるだろう？
それが証するよ。

えっと、わたしは誰？

おーほほほ。そうきたか。
ビッビには
見えない光の翼と、
見える闇の翼があるだろう？
ないなどと思わない人にはなく、 ある人にはないと知れるのだよ。

じゃ、真理って？

ほーほほほ、そうきたか。
ビッビには
真っ赤な真実と、真っ緑の嘘の、
２枚の舌があるだろう？
どっちも使わず話してごらん。
答えのない質問には、
大切なことがあるのだよ。





人の構成要素の依存関係、縁起について、断片A。


　たとえば石が投げられて、ガラスが割れたとします。これは石とガラスが接触することによって、ガラスの可
能性の一つが実現されたともいえます。この接触することで、時が意識されるのではないでしょうか。では接
触がない場合はどうでしょう。おなじ机の上にある紙と鉛筆も、接触がなければただそれだけです。紙は文字
が書かれる可能性を秘めて、鉛筆は文字を書く可能性を秘めて、可能性が接触している静かな時があります。

　そして紙があるから、鉛筆があるのではありません。リンゴがあるから、蜜柑があるのではありません。ま
た視覚があるから、聴覚があるわけではありません。また喜びがあるから、悲しみがあるわけではありせん。
またある思考があるから、ほかの思考があるわけではありません。また自己があるから、ほかの自己があるわ
けではありません。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

　けれどリンゴや蜜柑があるから、視覚や味覚があります。そういう味覚や聴覚があるから、喜びや怒りがあ
ります。そういう悲しみや楽しみがあるから、思考があります。そういう思考があるから、自己があります。

　これをまとめると、物質があるから感覚があり、感覚があるから感情があり、感情があるから思考があり、
思考があるから自己がある、となります。これらも接触によって生じます。これを、人の構成要素の依存関係
（縁起）と呼んでおきます。たがいに依存しあって機能し、単独では働かないからです。　　　　　　　　　

　ではそれぞれの構成要素が、どのようになっているでしょうか。たとえばリンゴは永遠に存在するものでし
ょうか。また移ろうものでしょうか。これに対する意見は後者に傾くでしょう。では宇宙はどうでしょう。実
際はどうでもかまいません。感覚や、感情や、思考も、どうでもかまいません。人の構成要素の依存関係（縁
起）は、どちらの場合も成立します。けれど絶対に、どららかであるということはないでしょう。　　　　　

　たとえば物質が恒常だと思うなら、それは欲望による誤解です。感覚、感情、意識が恒常だと思うなら、そ
れも欲望による誤解です。恒常ではないものを恒常だと思いたいことが欲望を生みます。もし移ろうものだと
思うとしたら、逆欲望による誤解です。厳密にはどちらでもありません。ただ依存関係（縁起）によります。
こういう理解が何になるのかと言われると困ってしまいます。でも明確な理解がない場合は認識が偏り人が偏
ります。物質に迷い、感覚に迷い、感情に迷い、意識に迷います。倒錯します。執着します。　　　　　　　

　このことの理解は、実に思考とか理論とかによるのではありません。これを納得し、記憶しても意味はあり
ません。そうするなら空想の理解です。ただ人が覚醒して、人に自己が与えられて、これを見ることができま
す。そのとき男性であれば、その女性が目覚め、超意識が生じます。そのとき人は命を、愛を見ます。　　　
　



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